_静 カラコロとベルをならしてドアを開ける。「今晩は〜」こざっぱりしたスーツに同色のハット、ブラウンのサングラスといった出で立ちで店に入ってくる/ _静 「どうも、お久しぶりです……取り敢えずスピリタスとミネラルウォーター、それにカットフルーツを」注文してから手近な席に腰を落ち着ける/ _8_静 「……う〜ん、やっと帰ってきた気がするなぁ」透き通った液体を喉に流し込んでから、感慨深げにぽつり/ _8_静 「……にしても、やっぱり明日平日だけあって、人いませんねぇ」静かな店内を見渡して呟く/ _8_静 「……まあ、1人酒もないことじゃないし」酒を飲んではフルーツを摘む/ _8_静 「……」黙々と店内に流れるジャズの音色に身を任せ、グラスを傾ける/ _8_静 グラスを空にして、ボンヤリと視線を彷徨わせる。「……マスター、Turkeyをストレートで」次の注文をしてグラスを返す/ _8_静 新しいグラスを受け取り、琥珀色の液体を一気に飲み込む/ _8_静 「……4月になって、新しい人も増えたのかしらね……ま、明日本部にお土産持ってくから、そんときにでも聞けばいいか……お代わり」もう一杯、ウィスキーを受け取る/ _8_静 「……週末にでも、お土産を使ってお菓子でも作ってくるかな……」ウィスキーをちびちびとやりながら呟く/ _8_静 「へ?ああ……ちょっとアメリカとカナダに旅行してたんですよ。あ、観光じゃなくて仕事なんですけどね。向こうの風景写真を……旅行会社のパンフレット用のです」苦笑混じりに答え、ウィスキーで口を湿らせる/ _8_静 「利用者が減ったとは言え、こういうのは季節毎に撮ってこないと結構ダメなんですよね」軽く笑いながら/ _8_静 「で、土産物はカナダで帰国前に買ったメープルシロップなんですけどね……やっぱり、そのまま持ってっても使い処が無いか」ちょっと首を捻る/ _8_静 「……お茶請け用にクッキーでも焼いてった方がいいですかねぇ?」答えを聞くまでもない問を発して、グラスを空ける/ _8_静 「……さて、今夜はこんなとこで失礼します。週末にはもうちょっと長居させて貰いますんで……では、おやすみなさい、マスター」そう言うとスッと席を立ち、軽やかな足取りでドアの外へ消えていった/