_9_天音 かららん♪ _9_天音 厚手のシャツの上に革ジャンを羽織り、デニム地のジーンズとスニーカーという色気のない服装で店に入る。 _9_天音 「こんばんは」と平坦な声でマスターに挨拶しながら、すたすたと奥の席へ歩き、無駄のない動きで椅子に腰掛けた。 _9_天音 イヤフォンをサッと耳から外し、折りたたんで上着のポケットに仕舞い込む。 _9_天音 「わらび餅と薄茶をお願いします。わらび餅には何もかけずに。」 _9_天音 マスターに素っ気無く注文すると、天音は入り口の向こうに目線を向けながら黙り込んだ。/ _9_天音 注文した品が置かれると「どうも」と小さく礼を言い、 _9_天音 「いただきます」と呟いてから、お茶を一口。/ _9_天音 「ふう」と一息ついて、楊枝を手に取り、わらび餅を口に運ぶ。もぐもぐごっくん。/ _9_天音 わらび餅を食べ終えて、お茶をくくっと飲み干すと、頬杖をついて入り口の向こうがわを目を細めて見やり、 _9_天音 視線を手元に戻して、沈黙する/ _9_天音 やがて店内の曲が終わり、次の曲に変わると、目を開いた天音はわずかに背中をそらして一呼吸し _9_天音 「ごちそうさまでした。美味しかったです。」と、マスターに声をかけると、席を立ち、 _9_天音 「おやすみなさい」とお辞儀してから、店を出て行った。/