有希 空気の淀みが溜まっていくように、「ソレ」はカタチをなし、そこに座っていた 有希 どこまでも不吉な気を漂わせながら、自堕落な様子でワイングラスを傾ける 有希 「さてさて、今日もおもちゃがあるといいんだけどなぁ」 _2_有希 / _煉 静かなバーの店内に不意に扉の開く音を響かせては、いつもと変わらぬ黒の詰襟姿で中へ入って _煉 他への関心の薄さを表すようにして周囲を見ることなく、それでいて他者から距離を置いた適当な椅子へと腰を下ろし。 _4_煉 「……珈琲。」ただそれだけ注文すると、カウンターの奥に並べられたアルコールの瓶を感動もなく眺め/ _2_有希 「あらあら、こんばんはー」「君はこの前居た子だよね?」 _2_有希 ややもすれば近寄り難い雰囲気など、ぶち壊す、といった調子で _2_有希 新たな来訪者の方へ身を寄せ、子供っぽい笑みを見せる _2_有希 「げんきしてたー?」くくく、と気味悪い笑い声を漏らしながら。/ _3_有希 服装は落ち着いた女子大学生、といった感じであるが、表情から艶めかしさすら覚えるかもしれない/ _4_煉 マスターより差し出された珈琲を受け取り、視線を逸らした先。 _4_煉 先日見掛けた相手がそこにいることを確認したなら、問われた質問にのみ答え。その声には、険悪な空気が立ち込めており。 _4_煉 「ああ――…たった今、阻害されたトコだがなァ。」 _4_煉 冷ややかな言葉、艶めかしい表情にも態度は崩すことなく、それを投げ掛けたなら視線を向かいに戻してしまい/ _3_有希 「それは重畳」くすくす、と明らかな嫌気を向けられても、 _3_有希 ・・・いや、向けられたからこそか、心底面白い、といったように笑う _3_有希 「この前はもう一人、面白い子が居たからちゃんと訊けなかったなぁ」 _3_有希 「なんて言うんだぃ?」「私は琴音有希だよ、ゆーちゃんでもゆきりんでも、好きに呼んでちょ♪」 _3_有希 逆撫でするかのように/ _4_煉 その言葉に、相手の言うところであろう少年の姿を脳裏に過ぎらせつつ、 _4_煉 「ハッ。」小さく吐き捨てた嘲笑。とはいえど、それには深い意味も意図もなく。 _4_煉 「鴉丸 煉。」「好きに呼べ―――名前なんぞに興味はねェ。」 _4_煉 「例外なく、手前のもな。」 _4_煉 その声に如何程も濃淡はなく。徐々に温度の失われつつある珈琲に口を付けたなら、それを嚥下し。/ _3_有希 「つれないなぁ〜、れんれん。」にやにやと煉の顔を眺めながらグラスを回している _3_有希 「何なら興味があるのかな?」 _3_有希 「金かい?」「女かい?」「それとも」 _3_有希 「戦闘とか虐殺がお好みかな?」 _3_有希 三流詐欺師の如く、言葉は薄っぺらく、しかし目は真面目である/ _4_煉 「……よく動くクチだな」 _4_煉 捲し立てる相手の言葉をフンと鼻で笑い、つまらなげに言葉を連ねる。 _4_煉 「俺が興味のあることだァ?」「決まってンだろ、そんなモン」 _4_煉 「俺の興味が湧いた事。」 _4_煉 「それが、俺の興味のある事だ。」 _4_煉 回答は単純明解にして、複雑怪奇。表情は変わらない、鋭い鷹のような視線を僅かに相手に向けるのみで。/ _3_有希 「それは答えてないも同然だぜ?レン君」 _3_有希 「それとも私みたいなやつには教えてくれない、ってことなのかなぁ〜、えぐえぐ。」 _3_有希 言葉と表情がコロコロと変わる上に、どこまでもちぐはぐな様子で。 _3_有希 「で、魔獣には興味が湧くのかい?」/ _4_煉 「ソイツが答えだよ、Damn you.」 _4_煉 答えていないということこそが答えであるとスラング雑じりに返したなら、立て続けに述べられた問いにはふと目を細め。 _4_煉 「魔獣……ねェ。興味はあるが、関心はねえ。その程度だ」/ _3_有希 「へぇ」 _3_有希 「私と同じで随分奇妙なやつだなぁ、れんれんは。」 _3_有希 「関心も無いのに、よくあんな規格外を相手にしよーなんて考えたねぇ」 _3_有希 「馬鹿ってよく言われるクチだろ?君?」ケラケラ、と/ _4_煉 「オレが正義感に燃えるような野郎に見えンのなら、その目玉は刳り抜いて取り換えた方がいいぜ」 _4_煉 にべもなく返しては、常温ほどになった珈琲を飲み干し、 _4_煉 「…吐かせ。化物の相手を化物がする、ってだけの話じゃねェか。」 _4_煉 「ムカつくほど、理に適ってやがる。」 _4_煉 鋭いながらも揺るがない声音は嘲笑われようと変動はなく。/ _3_有希 「いやいや、まさか」 _3_有希 「どう考えても正義感で何かを為すタイプじゃないだろーぜ、君は」 _3_有希 「アウトローな感じだしね♪」「組織員って感じでも無い無い♪」 _3_有希 「まぁ、だとしたら酔狂な趣味か、隠者か、私怨か」「そこらへんに落ち着くだろ−ぜ」 _3_有希 「まぁ、そんな推理はどーだっていいんだ、ワトソン君」 _3_有希 「・・・化物呼ばわりされてきたんだろ?可哀想に」 _3_有希 「でもでも」「たかが君が化物じゃ」「あいつらに失礼ってもんだよ♪」/ _4_煉 「失礼、ねェ。」相手の言葉をぽつり、と繰り返す。 _4_煉 そして、不意に口許を獣のように吊り上げては低く笑い声をもらして、 _4_煉 「くくく……礼を弁えるような野郎に見えたか。オレが?」 _4_煉 「化物集団が化物を倒す。御膳立てにしちゃァ十全、それだけだろォが」 _4_煉 そう嘯いては、事前のそれもなく唐突にして立ち上がる。そしてマスターを一瞥しては、相手に背を向けて _4_煉 「そうだろ、蛇のカミサマ。だからこそ、群れる―――」 _4_煉 別れの挨拶はそこにはない。独り言のように呟いた言葉を最後に、視線をくれることもないまま扉を開いてはそのまま店を後にし。 _4_煉  / _3_有希 「くすくす」「若くて柔らかそうだけど、なかなかどーして喰えない子じゃないか」 _3_有希 「あぁ、君のいう通りだよ」 _3_有希 「結局のところ、群れなきゃどーしよーもないから群れてる、そういう組織さ」 _3_有希 「・・・まぁ」 _3_有希 「同じ群れの虫でも」 _3_有希 「おなかがすいたら、共喰いしたりするんだよ?」 _3_有希 「うーん、愉しみだねぇ♪」 _3_有希 言い残し、黒い塵となって、どこかへ消えた/