_煉 からん、とドアベルの乾いた音を鳴らしながら扉を押し開く。 _煉 僅かに漂う、身体にこびりついた死臭を厭うように眉を顰めては足をそのまま進め、適当な席へと腰を下ろし、小さく溜息を吐く。/ _Len -> _5_Len _5_煉 普段通り珈琲を注文し、静かな店内で一人、僅かに物思いに耽る。切れ長の目を手元のカウンターへと落として、やがてその目を閉ざし/ _美冬 からんころん、ゴスロリ服で入店 _美冬 先にきていた煉に気づき「こんばんは」 _Mifuyu -> _7_Mifuyu _7_美冬 席につき _7_美冬 確か煉は魔獣戦に参戦していたなと思いだし「煉さんでしたっけ、一昨日はお疲れ様でした。お体とかは大丈夫ですか?」/ _5_煉 通り抜けた冷ややかな風にそちらへと視線を向け、何度も顔を合わせている為か、その顔も名前も確かに覚えがあり。 _5_煉 目を鋭く細めると、問いかけに対して「……問題ない。恙無く――だ。」/ _7_美冬 「そうですか、それは何よりです。」「あ、マスター。ワインとチーズください」/ _5_煉 「……とはいえ」 小さく僅かに悔いるように漏らし 「…詰めが、甘かったが」/ _7_美冬 「詰め?……なにかあったんですか? 」/ _5_煉 「……色々と、な」 差し出された珈琲を手に取り、口許に寄せながら/ _7_美冬 「でも、大事にはいたらなかったのでしょう? なら、とりあえずは良しとしておくのがいいのではないでしょうか」/ _5_煉 「……あァ、」 相槌は打つもののその表情は至って険しく、一口含み/  _7_美冬 ワインを飲みながら「いつもコーヒー、飲んでますよね?お好きなんですか?」/ _5_煉 最初は質問の意図が分からなかったのか眉を顰めて 「? ああ……そうだ。…これを飲む為に、来ている」/ _7_美冬 「ここのマスターの作るものはみんな美味しいですからね……お酒は飲まないんですか?」/ _5_煉 「……神事以外では、殆ど飲むことはない。それに、後一ヶ月は法的に許されていない」 _5_煉  と、視線をマスターに向け懐に忍ばせたココアシガレットを思い出し、また一口と珈琲を/ _7_美冬 「あ、まだだったんですね。今年の成人式は雪で大変じゃありませんでした?」/ _5_煉 「……積もっては、いたな。そのせいか、やけに五月蝿かった」 雪だ何だとはしゃいでいた同い年であろう彼らを思い出し、ぽつりと/ _7_美冬 「煉さんは雪ではもう遊ばないんですか?」/ _5_煉 「……遊ぶように見えるか…?」 ひくーい声で/ _7_美冬 「んー……見えないですね」/ _5_煉 「……雪が降れば風流だと感じる。そう理解はしているが、それ以上何かを思ったことはない。ただ、空気がより冷たくなるだけだ」/ _7_美冬 「看護師をしているもので、雪が降ると病室の子どもたちに遊びたいとせがまれるんですよね」 _7_美冬 「外に出せないのでしょうがないときはバケツに詰めて持っていきますが」/ _5_煉 ――自分が幼い頃は、そのように感じたことはあっただろうか。毎日を無為に過ごしていた過去をほんの一瞬だけ振り返り _5_煉 「……それでも構わないと、そいつらは感じるのか。降る雪でなくとも、いいと」/ _7_美冬 「子供は積もった雪の方が興味が有るんじゃないでしょうか、本当は広い雪の中で遊びたいんでしょうけど。病室は暖房入れてるのですぐ溶けちゃいますしね」/ _5_煉 「……出来ないことを望むのは、誰しも同じか」/ _7_美冬 「まあ、そういうものですよね。糖尿病の患者さんはカロリー気にせず食べたいと言いますし。 _7_美冬 車椅子の子供は走りたいと言います。でもそれぞれができることはあまり興味ないんですよね」/ _5_煉 「…得てして、そういうものだろう。遠いものはよく見えるが、近すぎるものは見えない。」 _5_煉 「そこにあることが当然だからだ。それがなくなるとは思っていない。」 _5_煉 「……それが、いつでも無くなり得るものだという事実には目を閉ざしている。」/ _7_美冬 「ロス・ゲイン効果と言うらしいですね。常に有るものには慣れてしまうらしいです」 _7_美冬 「でもそうじゃなきゃ、人間進歩しませんものね。無いものを得ようと努力も練習もしなくなっちゃいますから」/ _5_煉 「……だが、人間は他と同調し、融和する生き物なんだろう。――失ったことにも何れ、馴れる。」 _5_煉 冷えた珈琲を流し込むように飲み干して、時計を一瞥するとラストオーダーにもう一杯の珈琲を注文し/ _7_美冬 「そうですね、何らかの障害を負った人でも、時間が経つと今幸せですか?の問に『はい』と応える割合は普通の人とほとんど変わらなくなるらしいですから」/ _5_煉 「……皮肉な話だ。失う前はそれが当然だと考え、失えば嘆き悲しみ、それも時間が経てば受容する。」 _5_煉 「そうでなければ生きていけないとはいえ……」 そこまで言うと、口許をふ、と吊り上げ/ _7_美冬 「皮肉といえばたしかに皮肉かもしれませんね……」/ _5_煉 「――理解はしていようと、受け入れ難いのもまた事実だが」 そういって珈琲を飲み終えたなら、カウンターにマグを置いて/ _7_美冬 「あら、そろそろ閉店時間ですね・・・。煉さん今日はお話できてよかったです。それじゃあ、また」 _7_美冬 とワイングラスを置き、席を立つ/ _5_煉 「……あァ、」 席を立った美冬に横目で視線を投げると、僅かに虚空を見上げてから、己もまた立ち上がり/ _7_美冬 「マスター、ごちそうさまでした」と言って退店/ _5_煉 「……受容、し続けなければならない、か」 そう小さく漏らすと美冬が立ち去って少しした後、己もまた店を出て/