EM_Yama> 居酒屋『深海魚』 EM_Yama> 都心部の歓楽街にある某ビルの地下一階にそれは在った。 EM_Yama> 駅から近く、朝までオールナイトで営業している点とか、 EM_Yama> 注文に迅速に反応し、すぐ冷えたビールを持ってきてくれる点とか、 EM_Yama> 女性店員の和服をイメージした制服がかわいらしい点とか、 EM_Yama> そんな所が受けて、よく学生やサラリーマンの宴会にも使用される店。 EM_Yama> そこに今、2人の男が入店した。 EM_Yama> 一人は白い肌とすらりとした体つきの、長い髪を後ろで纏めた青年。 EM_Yama> もう一人は引き締まった体つきの、短髪切れ目の青年。 EM_Yama> どちらもなかなかの美形であるが、明らかに他の人間と一線を隔す所が有った。 EM_Yama> ・・・・・・・・・すなわち、双方黒コート EM_Yama> もうすぐ本格的な冬とはいえ、さすがに二人揃ってその格好はひく人間も多々いるであろう。 EM_Yama> (怪しいわ…この人たち絶対怪しいわ…) EM_Yama> 2人の入店を最初に目撃したバイトの女性・小島知恵(20)は咄嗟にそんなことを考えたが、そこは営業スマイルで手前にいた短髪の青年の方へ話しかける。 EM_Yama> 「いらっしゃいませ、何名でございますか?」 EM_Yama> 「2名だ」 EM_Yama> 「コースはどうなさいますか?」 EM_Yama> 「いや、とりあえずビール2本とつまみを頼む」 EM_Yama> 「畏まりました。ではこちらへどうぞ」 EM_Yama> そういうと、彼女は2人を襖で閉められる、2~4人程度が入れる和風の個室へ案内する。 EM_Yama> 彼等が個室に入ったあと、「ごゆっくりおくつろぎください〜」と襖を閉め、彼女はその場を後にした。 EM_Yama> (あの2人、ワケアリみたいだけど、やっぱりそうなのかしら………は、新刊のネタが!) EM_Yama> ◆◇◆◇◆◇ EM_Yama> それは、只の日常。 EM_Yama> 以前会ったことのある2人の男がたまたま再開し、その足でしばしの酒を酌み交わした。それだけの話。 EM_Yama> 世界の命運にも、彼等の所属する『機関』にもなんら影響を与える事のないであろう、ただの飲み屋の客の話。 EM_Yama> けれど確かに、それは在った。 EM_Yama> ◇                     ◆ EM_Yama> 『チャットイベント:けれど確かにそれは在った』 EM_Yama> ◆                     ◇ EM_Yama> / EM_Yama> 夜真「ふむ、はじめて来たが…活気もあって中々良い店だな。」そんなことを淡々と言いつつ、胡坐をかいてテーブルに向かう/ Luzyu> 龍樹 くすくす笑いながら「そうですね…。あまり、感情の蟠っている部分もないみたいですし。」別にコートを脱ぐこともなく、その向かいに座る。/ EM_Yama> 店員「ビールをお持ちしましたー」さっきの女性店員がお盆にビール2本とおつまみの空豆を持ってくる EM_Yama> 夜真「む、早いな。こちらに頼む」 EM_Yama> そうして冷えたテーブルにビールが置かれ、女性店員は思わせぶりな眼をして去っていく。 EM_Yama> 夜真「まあ、せっかく来た事だしな。まずは飲め」とくとくとビールをついで、渡す>龍樹/ Luzyu> 龍樹 軽く頭を下げてから「…あぁ、ありがとうございます。」ビールを受け取る。>夜真/ Luzyu> 龍樹 しかし、さっきから変な勘違いを受けているような気がするな等と一瞬思考したりするが、顔には出ない。/ Luzyu> 龍樹「…おっと。夜真さんも、どうぞ。」お返しに、こちらから夜真の方にビールをついで渡す。>夜真/ EM_Yama> 夜真「む、これは…冷えているな。店の前の広告は確かだったようだ」つがれたビールを素直に受け取る>龍樹 EM_Yama> 夜真「さて、つもる話もあるのだろうが…まずは、何に乾杯をする?」>龍樹/ Luzyu> 龍樹「そうですね…無難に、戦友との再会に、でどうでしょう。」半ば忘れられているのを知っていながらわざとふってみる。>夜真/ EM_Yama> 夜真「・・・・・・・・・・・・・・・」 EM_Yama> 数瞬の沈黙の後 EM_Yama> 夜真「そうだな。では、再開に・・・乾杯」ゆっくりと、グラスを前に突き出す/ Luzyu> 龍樹「…乾杯。」裏側の感情がよく分からない笑いをしつつ、こちらのグラスをそのグラスに軽く当てるように突き出す。/ EM_Yama> 夜真 グラス同士を軽く当てたあと、ぐぐっっと一杯飲み干してしまう。「……美味い…かな」/ Luzyu> 龍樹 夜真が一杯飲み干す間に、こちらは半分がいっぱいいっぱい「美味い方だと、思いますよ。」一度、口を挟んでから残りも飲み干す。/ EM_Yama> 夜真「冷えた感じが良いな。罅の入った刃が、熱された後かける水のようだ。」なにやら微妙な例えを…>龍樹/ Luzyu> 龍樹 くすりと笑い「…夜真さんらしい例えですね。それは、浴びる側にとっては余計に冷たいでしょうけど。」やや微苦笑の色がある笑い。>夜真/ EM_Yama> 夜真「だが、新たに研ぎ澄まされた刃を取り戻し、再び剣としての役割を果たすことになる。…また壊れれば寿命が来るまで同じことをするのみだな」何かを見ているような、何も見ていないような、そんなぼんやりとした視線。/ Luzyu> 龍樹「それが剣ならば、使われる戦いが終わるまでは、そうでしょうね。または手入れする者が居なくなるまでは。」特にその視線を遮ることもなく、言葉を。/ EM_Yama> 夜真「手入れが無ければ錆びるだけか…自分だけでどうにかできることなど限られるからな。」>龍樹 EM_Yama> 夜真「だが、自分だけでどうにかしなければならんときもあるさ…」そういって、空豆を一つ口に EM_Yama> 夜真「・・・で、何か話があったのか?」>龍樹/ __Luzyu> 龍樹「えぇまぁ…もっとも。話…と言っても、ただの雑談ですが。」にこりとして「…びっくりしたんですよ、急にあんな手紙よこすんですから。」と。>夜真/ EM_Yama> 夜真「む?手紙だと?そうか、手紙か………」ココに来て、初めて困ったような表情をみせたり>龍樹/ Luzyu> 龍樹「その後思いっきり行方をくらますし…おや?」困っているのを見て取って。「どうか、しましたか?」>夜真/ EM_Yama> 夜真「…いや。その、なんだ。すまん」マンガチックに表現するのであれば、眼が横線になっている>龍樹/ Luzyu> 龍樹「……ふむ。覚えてらっしゃらない、とか?」珍しく困った顔を見て、思案しつつ。>夜真/ EM_Yama> 夜真「肯定だ。そのことを謝っている」あっさりはっきりきっぱりと、微妙に偉そうに取れる淡々とした口ぶりである>龍樹 EM_Yama> / Luzyu> 龍樹「…色々、あったようですね。もしや、とは思っていましたが。」少し、目を細めて。過去を振り返るかのようにゆっくりと。>夜真/ EM_Yama> 夜真「ふむ。まあやってることといえばいつもどおり、壊したり壊されたり殺したり殺されたりだ。」あまり感情の篭らない、かといって冷たいという感じでもない静かな表情>龍樹 EM_Yama> / EM_Yama> 夜真「そっちはどうだ?楽しい出会いでもあったか?」相手のビールをつぎながら>龍樹/ Luzyu> 龍樹「変わったのは、貴方と環境だけ、と。」夜真の問いに微苦笑し「いえ、こちらもいつも通りですよ。…見失ったものは、幾つかありますが。」>夜真/ Luzyu> 龍樹「そういえば、もしや私の名前もお忘れになったのでは? 見たところ、記憶がかなり飛んでいるようですし。」言いつつ、夜真のグラスにビールをつぐ。>夜真/ EM_Yama> 夜真「・・・・・・ふむ。そういえば」かなりひどい物言いである。>龍樹/ Luzyu> 龍樹「ははは、やはり、ですね。」苦笑。「改めて、名乗っておきましょう。十六夜龍樹と申します。」>夜真/ EM_Yama> 夜真「・・・すまんな。」 EM_Yama> 夜真 表情を引き締め、真面目な表情「では、改めて。賽河夜真、府水海月、月読、各人好きな呼び名で呼ぶ。好きに呼べ」>龍樹 Luzyu> 龍樹「…ならば、今まで通り夜真さんと呼ばせて頂きますね。」にこりとして「改めて宜しく、夜真さん。」>夜真/ EM_Yama> 夜真「そうか。なら俺はお前の事を『龍樹』と呼ぼう…それが今までと同じだったのか、そうでなかったかは知らんがな」>龍樹/ Luzyu> 龍樹「そこに込められた意味は違いますが、どちらも、以前と同じですよ。これからどう変わるのかも知れないことですけれど。」>夜真/ EM_Yama> 夜真「そうか……変っていないのか。」どこか安堵を含んだような、そんな顔。/ Luzyu> 龍樹 にこりと笑って「一つか二つくらい、変わらないモノがあると、少し安定しますよね。…それが何であれ、激しい変化の後は、特に。」>夜真/ EM_Yama> 夜真「まあ、餓鬼の時分から大して変化などありはしない生活だがな」苦笑しているのだろうか?表情からは読み取る事は出来ないが…>龍樹/ Luzyu> 龍樹「そうでしょうかね?とてもそうは見えませんけど。ま、大きい小さいは主観ですからね。」微苦笑。>夜真/ EM_Yama> 夜真「単純に本人が気付いていないだけかもな」ふむぅ、とビールをのんだり>龍樹/ Luzyu> 龍樹「えぇ…灯台もと暗し、ってところでしょう。」近いと逆に見えないものです。と。>夜真/ EM_Yama> 夜真「どうやら、お互い様のようだがな」ぼそっ>龍樹/ Luzyu> 龍樹「……そうですかね。」ぼそり。>夜真/ Luzyu> 龍樹「……。」少し考えるようにして、ビールを口にする。/ EM_Yama> 夜真「見たところ、随分と『コワレモノ』な身体のようだからな。BARでの反応を見る限り別の箇所も幾らか罅が入っているぞ」あっさりと言ってのける>龍樹/ Luzyu> 龍樹 あまりにもあっさり言ってのけられたので不意をつかれて咽せる。「…そこまで、そう見えましたか。」苦笑「隠せてませんねぇ…。」>夜真/ EM_Yama> 夜真「お前の身体がどうなろうと正直興味は無いがな、ココロある限りは抗え。まだ抗う事の出来るうちにな…」>龍樹/ Luzyu> 龍樹 くすりと笑うが目が笑っていない「それは、当たり前ですよ。抗わないで流されるのは、趣味じゃない。…例えどんな正体不明のことでも、ね。」>夜真/ Luzyu> 龍樹「前も、注意されましたっけね。その時に貰った弾丸、まだ使えずにいますけど。」過去を少し振り返って。懐かしむわけではないが。>夜真/ EM_Yama> 夜真「……俺が俺であるために。今までも、これからも、それは変らない。」 EM_Yama> 夜真「『それ』がまだ生きているのなら、その弾丸に誓おう」/ Luzyu> 龍樹「…そういう所も、変わりませんね。」くすり。>夜真/ Luzyu> 龍樹「今のところは、ですけど。…お互い、明日の知れぬ身ですから。」>夜真/ EM_Yama> 夜真「まあ、そういうことだな。縁と命があれば…また飲み交わそう」>龍樹/ Luzyu> 龍樹「えぇ…もしも道が交差する時があれば、また。」>夜真/ EM_Yama> 夜真「っと、いつのまにかビールが切れていたか…」 EM_Yama> 夜真「時間もころあいだな。お開き、ということか…」/ Luzyu> 龍樹「早いものですね。あっという間に時が過ぎて…。帰らなくては、ですね。」>夜真/ EM_Yama> 夜真「まあな。いい加減帰らんと家主がうるさそうだ」>龍樹/ Luzyu> 龍樹「おや、下宿でもしているんですか。それは心配をかけてはいけませんね。」>夜真/ EM_Yama> 夜真「それも、環境の変化という奴だな」>龍樹/ Luzyu> 龍樹「そうなりますね。…いやはや、あまり想像出来ません。」微苦笑。>夜真/ EM_Yama> 夜真「一度会うもよし、あわざるもよし……か。では、そろそろ勘定だな」席を立つ/ Luzyu> 龍樹「…えぇ、行きましょう。そういえば、お忘れ無く。急にいなくなった貴方を心配した人は、確かにいましたよ。」次いで、立ち上がる。/ EM_Yama> 夜真「・・・・・・・・・あいつは、違うだろうな」ぼそっと、誰に言うまでもなく/ Luzyu> 龍樹「…さて。素直ではありませんからね、誰も彼も。」呟きに近く。/ EM_Yama> 夜真「店員、勘定だ」女性店員を呼びつけ、勘定を始める。 EM_Yama> ◇◆◇◆◇ EM_Yama> 勘定を終え、店を出る。 EM_Yama> 龍樹と別れ、人通りの無い道をあるいている中、彼は自分の身体の異常に気付いた。 EM_Yama> ………いや、もともと知っていたのだろう。なぜならそれは、いつも彼と共にあるのだから。 EM_Yama> 瞬間、無数の剣が内側から身体を貫く。 EM_Yama> ともに頭の中に流れくる苦痛、悲鳴、不理解、憎悪、様々な負の感情。 EM_Yama> さきの魔獣戦にて、死なせてしまった少女達の怨念。自らのうちに留めたものが噴出してきたのだ。 EM_Yama> 『それ』は彼の身体を刻む。 EM_Yama> 魂を刻む。 EM_Yama> 心を刻む。 EM_Yama> 命を刻む。 EM_Yama> 死を刻む。 EM_Yama> ・・・・・・記憶を刻む。 EM_Yama> 痛みはない。抵抗も無い。既に彼の中では『それ』は彼の一部と化している。月読による侵食とは違った、自らの選んだ『罪』と『罰』 EM_Yama> だから■れは■めない。これは自■が■分であるための。あの■■で■■に■■たよう‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ EM_Yama> 数瞬の後、何事も無かったかのように青年は再び歩き出す。 EM_Yama> 「……何だったか、何を忘れたのか…」 EM_Yama> そんな言葉を、ぽつりと呟いて。 EM_Yama> こうして、この話は終わり。 EM_Yama> 男2人が酒を飲んで、話した。ただそれだけの他愛の無い話。 EM_Yama> けれど確かに、それは在った。 EM_Yama> 『了』 EM_Yama> ******* EM_Yama> 後日譚 EM_Yama> 都内某所冬、「黒衣の抱擁」というタイトルの本が売られ、一日の間の販売ながら数百冊が売れた。 EM_Yama> 但しこのことは、この2人とは関係が無い。たぶん EM_Yama> / EM_Yama> お疲れ様でした Luzyu> お疲れ様でしたー。 EM_Yama> では、堕ち Luzyu> あい。長々すみませんでしたー。